いくつかの 独立 どくりつ した楽曲が,つながって1曲としてまとめられているものを多楽章形式の楽曲といい,その 個々の楽曲のことを「楽章」といいます

日本列島に人が住み始めた時期は、人の生活の痕跡である石器の年代から推定されています。それによると、今から八万年前から四万年前のこととされています。列島に住んでいた人びとも「音楽」をもっていたかもしれませんが、それを明らかにする手段は今のところありません。

私はすでに「音楽」という言葉を使いました。それは、私が音楽を「人間が組織づけた音響」と考えるからです。日本列島に住み始めた人びとが何らかの意図をもって、声を出し、足を踏んで音を出し、石を叩いて音を出したとすれば、それを音楽と考えます。

もちろん、地域や時代が違えば、音楽と考えられるものも違います。そのため、ある地域の人が他の地域の音楽や、自分たちよりも前の時代の音楽を「あんなものは音楽ではない」と否定することは、昔も今も見られることです。しかし、音楽の歴史を考えるためには、どんな音楽に対しても、人間が行うことなので理由があるはずだと考えて、そこに首尾一貫性を探し出して音響がどのように組織づけられたかを考えることが必要なのです。

これに関連するのが、聴き方の違いです。「音階をもつものだけが音楽だ」ととらえている人は、日本の寺院の鐘には音階がないと考えて、音楽としては聴かないでしょう。しかし、鐘の余識と響きの変化を音楽として聴く人もいるでしょう。私は、音楽の歴史の中に、音の響きとともに、音楽の作り方と聴き方を含めることにします。

from ものがたり日本音楽史 by 徳丸吉彦
岩波ジュニア新書